1 指定管理者制度
地方公共団体は,公の施設の設置の目的を効果的に達成するために必要があると認めるときは,条例の定めるところにより,法人その他の団体であって当該地方公共団体が指定するもの(指定監理者)に,当該公の施設の管理を行わせることができるとされています(地方自治法244条の2第3項)。
公の施設の管理を指定管理者に行わせることにより,弾力的な人員配置,住民の要望に即応した利用時間の設定など,直営では対応することが困難な問題についても,対応が可能となることが考えられるとされており,現在多くの自治体において,指定管理者制度が導入され,活用されています。
2 指定管理者の選定基準
指定管理者の指定は,本来地方公共団体が有する公法上の権限の委譲を行うものであり,指定管理者は,当該地方公共団体のために公権力を行使していると評価されます。また,公の施設は,市民にとって重要な施設であり,その利便性などは市民生活に大きな影響を与えます。そのため,地方公共団体としても,可能な限り適切な事業者を選定する必要があります。よって,単なる一般競争入札ではなく,プロポーザルなど,自治体にとっては負担の大きい契約相手方選定手法を採ってでも,より良い事業者を選定しようとするのです。
プロポーザルにおける選定基準としては,当該団体の実績(経験)や経営の健全性,管理を行う人的・物的能力,条例で定める管理の基準を実現する具体的な手法の妥当性,当該公の施設の管理に関する収支計画の妥当性,環境問題に対する意識,当該団体の社会的責任に関する認識などがあります。
指定管理者の選定は,公募で行われることが多くなっているところ,指定管理者として選定されるためには,これらの選定基準を良く理解し,例えば,地方自治法その他の法令上許容される範囲で,より良い管理手法を提案するなどの努力が必要となります。
3 指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲
指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲は,条例で定めなければならないとされています(地方自治法244条の2第4項)。
4 指定管理者との協定書(合意)で定められる事項
また,指定管理者に指定されると,地方公共団体との間で協定書を取り交わし,条例や仕様書で定められた事項を含む,より詳細かつ実務的な事項につき,契約をすることになります。
協定書に盛り込まれる事項としては
① 管理の対象となる施設(物品)の範囲
② 各種の届出や協議の手順
③ 下請けの禁止とその例外
④ 小規模修繕や管理費用の負担区分
⑤ 管理に要する備品等の扱い
⑥ 事業計画書や事業報告書の記載事項
⑦ 実地調査の手続
⑧ 料金徴収を委託した場合の徵収と納入の手続
⑨ 利用料金制に関すること
⑩ 賠償責任保険への如入
⑪ 指定期間満了時の引き継ぎや安全の確保策
⑫ 指定取消しの場合の措置
⑬ 経営が困難に陥った場合の報告
などのほか
「リスク分担表」が末尾などに付され,事業により生じうるリスクを,地方公共団体と指定管理者のいずれが負担するのかについて,一覧表形式で定められる場合も多いといえます。
5 公の施設の管理と長寿命化・防災
多くの公の施設が,築後数十年を経過し,老朽化が進み,地方公共団体にとって,その維持・管理費用の負担が大きくなっています。また,近時「激甚化」が進む災害対策(台風,地震など)への対策も大きな課題とされています。
指定管理者としては,これらの課題に対応するため,地方公共団体の考えを十分に理解し,その役割・責任を分担する必要があります(そのためのコストも指定管理料などに盛り込まれることになります。ただし,一般的には,大規模な修繕などは地方公共団体が負担する場合が多いと思われます。)。
6 目的外利用許可の制度を活用した施設の有効活用
公の施設は条例で設置されるものであり(地方自治法234条の2第1項),そこでは目的が明示されています。そのため,本来は,条例で定められた目的以外に利用することは認められないと言えます。
しかし,近時,住民の福祉を増進するための資源の有効活用という観点から,条例の定め方自体を工夫することによって,弾力的に施設を活用する事例があります(例:空き教室の他目的への活用,老人福祉センターの夜間の利用,勤労青少年センターやスポーツ施設の特定ブースなど空き時間が長い施設の有効利用など)。
勿論,公の施設である以上,本来の目的の達成に支障を生じさせることはできませんが,維持管理コストのかかる公の施設が十分に利用されない状況は改善する必要があると思われます。指定管理者は,当該公の施設の隅々まで状況を把握できる立場にありますから,これらに関する提案能力も試されると考えてよいでしょう。