<典型例>
ある事業を行うために甲と乙が土地建物を共同で購入(持分割合は各2分の1)しましたが、甲と乙が仲違いをしました。
甲は、当該不動産を乙に全て取得してもらい、自分自身は、不動産の価格(1000万円)の2分の1(500万円)を甲から受け取りたいと考えています。
<典型的な解決方法>
このような場合、甲から依頼を受けた弁護士としては、まずは乙と話合いの機会をもち、不動産を乙に全て取得してもらい乙から甲の持分相当額の賠償金(価格賠償金)を支払ってもらうなどの共有関係解消のための解決方法を提案します。
話合いにより合意が成立すれば、合意書面を取り交わし、あとはそのとおり実行をしてゆくということになります(登記移転手続と賠償金の支払いをする)。
しかし、話合いの機会をもっても合意が成立しない場合には、裁判所に対し、共有物分割請求訴訟を提起します。
上記の甲さんの希望は、法的には「全面的価格賠償」の方法に該当するため、当事者の合意によるならともかく裁判所の判決という手続で行うことはできないとする見解もありましたが、現在では、次のような条件が満たされる場合には、裁判所の判決として全面的価格賠償の方法によることも可能であるとされています。
<条件>(最高裁判所平成8年11月31日判決、同平成11年4月22日判決等)
1 当該共有不動産を乙に取得させることが相当だと認められること
2 当該共有不動産の価格が適正に評価されること
3 乙に支払い能力があること
4 甲にその価格(500万円)を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情のあること
共有不動産は、管理も持分の過半数で決めなければならないなど、やっかいな問題を抱えやすい法律関係です。
親の代は話ができても、子の代は話ができないであろうことが想定される場合もあるでしょう。
早めに共有関係を解消したいとお考えの場合は、弁護士に相談するのもよいと思います。
なお、共有物が「遺産」である場合には、遺産分割手続という家庭裁判所の手続により共有状態を解消する必要があります。詳細はお問い合わせください。