不正競争防止法について
企業が営業活動を行ううえでは,他の事業者の営業を妨害するような方法に出ることはできません。不正競争防止法で「不正競争」として列挙されているそれぞれの行為を行うことが規制されています。
「不正競争」① =他の業者と紛らわしい商品名や企業名を名乗る
それでは「不正競争」とは具体的に,どのようなものが該当するでしょうか。
まず,「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示」を行うこと(不正競争防止法2条1項1号)が挙げられます。すなわち,A社の商品としてユーザーの間では周知(「広く認識」)されているものを,B社が販売等を行う行為が禁止されています。
「不正競争」② =営業秘密の利用
その他に,他の業者から「不正の手段」により「営業秘密」を取得したり,取得したものを使用すること(不正競争防止法2条1項4号)が禁止されています。近年特に,ライバル業者等に,技術や顧客名簿等が漏洩する事案が頻発し,その多くは,社内の現職従業員や元従業員が関与していることが多いところですが,不正競争防止法に抵触する場合には,民事上も刑事上も責任を問われかねない違法な行為に該当します。
ただし,法律上の「営業秘密」とは「秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないもの」(同法2条6項)とされており,会社等において秘密として管理されていたこと(従業員から見てもそれが秘密であると認識可能であったこと等)が鍵になってきます。
情報等の管理の重要性
顧客に関する情報等について,社内で秘密であることを周知徹底していなかったり,データへのアクセス制限を行う等の形で管理がなされていない場合,法律上の「営業秘密」が持ち出されたと主張できないことがあるため注意が必要です。従業員に「秘密保持誓約書」を作成させることはもちろんのこと,個別のデータを適切に管理しておくことが,後日,法的係争になった場合も重要となってきます。
営業を妨害された場合に取りうる手段
営業を妨害された事業者は,不正競争防止法違反にあたる行為(営業上の利益を侵害する行為)を差し止めることができます。また,損害賠償を求める場合,損害額の立証について法律上損害額の推定が行われます。
A社の顧客情報が,B社に不正な形で持ち出された場合を想定すると,差止や損害賠償請求を迅速に行い,一刻も早く営業活動に支障が出ることを阻止していく必要があります。