市街地再開発事業と地方公共団体の政策変更

市街地再開発事業は,都市計画を前提とするものであり,また,各段階において行政庁の認可を要するため,地方公共団体との協力なしに進めることは困難です。また,その事業の財源として,地方公共団体の補助金のほか,再開発ビルの保留床に公共施設等が入居することの対価等があてられるなど,地方公共団体に財政的にも依存することがしばしばあります。

そのため,選挙等により地方公共団体等の政策が変更された場合,市街地再開発事業についても,行き詰まり等の問題が生じることがあります。

 

そのような問題にかかわる裁判例として,①徳島地裁平成29年9月20日判決と,②徳島地裁令和2年5月20日判決があります。これは,徳島市の市街地再開発組合による市街地再開発事業について,徳島市が再開発ビルの保留床を購入して音楽ホールを作る政策が前提となっていたところ,新市長が政策を変更したことを理由に,行政庁として権利変換計画を不認可としたことから起こった紛争です。①は,不認可の取消等を求める行政訴訟であり,②は政策変更による損害の賠償を求める国家賠償訴訟です。

裁判所は,権利変換計画の不認可については,市長の政策変更そのものは許容されるところ,ホールの購入代金がなくなったことで資金計画に重大な影響が生じ,事業の継続の見通しが立っていないと判断して不許可としたことは合理的であるから適法としました。

しかし,国家賠償訴訟では,音楽ホールを作るという政策に基づく市の活動により,再開発組合が有するに至った市の政策の維持・事業の実現に対する信頼は法的保護に値する以上,政策変更及び不認可は不法行為として違法になるとして,損害賠償義務を認めました。

 

このように,地方公共団体等の政策変更は,行政訴訟と国家賠償訴訟の双方で問題となりますが,それぞれで,違法かどうかの判断の方法が異なることとなります。