Q 後見と死後事務委任契約とは何が異なるのですか。
A 後見は、生前の生活・財産管理のサポートを目的としている一方、死後委任契約は、亡くなられた後の手続的な事務や費用の精算に関する事務、葬儀埋葬に関する事務のサポートを目的としています。
成年者に対する後見制度としては、裁判所が後見人を選任する成年後見と、私的な合意によって後見人を選任する任意後見があります。どちらも、被後見人の存命中その判断能力が衰えた場合に、後見人がその生活や財産の管理をサポートすることを目的としている点は共通しています。
そのため、後見は被後見人が死亡すれば終了するものとされており、後見人が死後の事務処理に介入することは原則としてできません。なお、例外的に、後見人が死後の事務処理を行いうる要件としては、次のような場合がありえます。
| 応急処分義務 (民法654条、874条) | 一部の財産管理権限 (民法873条の2) |
種別 | 成年後見・任意後見どちらも可。 | 成年後見のみ。 |
要件 | ①死後事務の必要性があること ②急迫の事情があること ③相続人等がいまだ委任事務を処理できないこと | ①死後事務の必要性があること ②相続人の意思に反することが明らかでないこと ③相続人がいまだ相続財産を管理できないこと ④財産の保存、未払債務の弁済等に該当すること |
しかしながら、どちらも要件が明瞭とはいえないため事務処理を行いうるのかどうかの判断が難しいこと、事務処理の方法を被後見人が指定できないこと、成年後見人の死後財産管理権限(民法873条の2)は相続人の意思に反する事務処理ができないこと等の点がネックになります。
これに対し、死後事務委任契約を締結するときは、生前の協議によって明瞭な条項を置き、具体的にどのように事務処理をすべきかを合意するため、上記のようなネックを回避できます。また、相続人も死後事務委任契約の内容に拘束されますから、事務処理の可否が、相続人の意向に左右されることもありません。
以上のように、死後の事務処理について希望がある場合、後見では対応が困難であることから、死後事務委任契約を締結する必要性が高いと言えます。