1 個別的遺留分
遺留分とは,概要としては,相続財産(ただし,正確には後記のとおり死亡時の遺産以外のものも含まれます)の額の2分の1(相続人が直系尊属のみである場合は3分の1)に,法定相続人の法定相続分を乗じた額を,各相続人がそれだけの利益を得るべき権利として保護する制度です。
たとえば,配偶者が唯一の相続人である場合,本来は100%の法定相続分を持ちますので,それに2分の1を乗じて,配偶者の遺留分は相続財産の2分の1となります。配偶者と子2名が相続人である場合,配偶者は50%の相続分,子2名は25%ずつの相続権を持ちますので,それに2分の1を乗じて,配偶者の遺留分は相続財産の4分の1,子2名の遺留分は8分の1ずつとなります。
遺留分について,各相続人は,多くの遺産を相続した他の相続人や,遺贈や生前贈与を受けた者に対して,法律の定める順位等に従って,遺留分侵害額(概要としては,遺留分の額から,相続・生前贈与により取得した財産を引いて,相続した債務の額を加えた額)の金銭を請求することができます。
2 遺留分の計算方法
遺留分の具体的な額は,「死亡時の遺産」の価額に「1年前になされた生前贈与(ただし相続人に対してなされた生前贈与の場合は10年前になされたものまでを含む。)」の価額を合計したものに対して,上記の個別的遺留分の割合を乗じることになります。
そして,遺留分の権利を行使する者(遺留分権利者)が生前に得ている生前贈与等がある場合は,上記の計算方法で計算された額から,その額を引いて遺留分侵害額を出すという計算になります。
3 遺留分をめぐる紛争
このような計算が必要となるため,遺留分をめぐる紛争は,①そもそも財産の総額がいくらと評価されるか,②遺留分の権利を行使する者(遺留分権利者)や,相手方が,それぞれ生前に贈与を受けていたか否かやその金銭的評価を中心に,争いとなることが多いと言えます。