1 評価損には技術上の評価損と取引上の評価損とがあります。
2 技術上の評価損は,修理をしても,技術上の限界があって,事故車両の機能や外観に回復できない欠陥が残る場合をいい,これは,賠償されると考えてよいと思われます。
3 取引上の評価損は,上記2のような評価損は発生していなくとも,事故歴があるために車両の交換価値が下落する場合をいいます。
これは,①新しい車,②走行距離の短い車,③損傷の場所が中古車販売業者に表示義務が課せられている部位にわたる場合(自動車業における表示に関する公正競争規約11条1項10号,中古車に関する施行規則14条),④高価な車,⑤人気車の場合には,認められやすいとはいえますが,総合判断となるため,一概には言えません(※参考として,裁判で認められた例の一部を末尾に記載します。)。
一応の目安としては,外国車又は国産人気車の場合,初年度登録から5年(走行距離6万km)以上,その他の車種で初年度登録から3年(走行距離4万km)以上のものは,評価損が認められにくいといわれますが,一概には言えません。
<参考例>
1 肯定例
①横浜地裁H24.10.29
【車種】トヨタヴェルファイア
【修理費】57万4033円
【評価損】28万7016円
【修理費割合】50%
【登録後】2週間
【走行距離】―
②東京地裁H23.11.25
【車種】スカイラインGTR
【修理費】141万5478円
【評価損】70万7739円
【修理費割合】50%
【登録後】3ヶ月
【走行距離】945㎞
③京都地裁H11.7.6
【車種】ベンツE320
【修理費】91万9800円
【評価損】65万円
【修理費割合】70%
【登録後】10ヶ月
【走行距離】4~5000㎞
2 否定例
①東京地裁H7.10.17
【車種】日産・シルビア
【修理費】86万9505円
【修理費割合】0%
【登録後】1年1ヶ月
【走行距離】1万5062㎞
②東京地裁H3.10.22
【車種】普通車
【修理費】205万4587円
【修理費割合】0%
【登録後】―
【走行距離】―
③大阪地裁H10.2.20
【車種】国産車
【修理費】149万1000円
【修理費割合】0%
【登録後】1年5ヶ月
【走行距離】―