いざというときの債権回収に役立つ契約条項
1 期限の利益喪失条項
強制的に当方の債権の弁済期を到来させる条項です。
弁済期が到来すれば、債権全額の支払いを相手方に請求することができるようになりますし、担保の実行や相殺による債権回収等を行うことができるようになります(※)。
※弁済期が到来する前は、どれほど相手方の資産状況に不安があっても自己の債権を強制的に支払わせることは出来ません(原則)
2 契約の当然終了条項(解除条項)
取引先の信用不安が大きくなった場合など、これ以上取引を継続するリスクを回避したい場合に有効な条項です。
契約を解除することができると定めておくこともできますし、解除通知を送付しなくとも当然に契約が終了すると定めておくことも可能です。
※ ただし、取引先が民事再生手続や会社更生手続の開始決定を得た場合、これらの手続開始(の申立)等を理由として契約解除ないし当然終了をさせることができる条項を置いたとしても、その効力が制限される場合があります。
3 所有権留保条項
納入する商品の所有権を、代金支払が完了するまで留保する旨の条項です。
① 代金が支払われなかった場合には、売主は何らの通知・催告を要することなく納入した商品を引き上げることができること、
② 売主は引き上げた商品を任意に処分等することができること、
③ 処分代金をもって代金債務の弁済に充当することができること
などを取り決めておくのが典型例です。
4 増担保・追加担保請求条項
担保価値が低下した場合などにこれに見合う担保の追加を差し入れるよう要求することができる条項です。実際に追加してもらえるかというと難しいかもしれませんが、この条項を理由に協議を申し入れ、相手方の状況等を聞き取ることができる場合があります。
5 取引先の財産等に関する情報を収集するための条項
取引に関連して定期的に取引先の財産等に関する情報を収集することができるようにしておくための条項です。例えば平時から自社が売り渡した商品在庫の明細を定期的に報告させる義務を定めることなどが考えられます。
6 自社債権の存在・内容の証明強化のための条項
定期的に債権内容を確認すること(債務残高等確認書の作成等)を取引のルーティンの中に取り入れておくことにより、自社債権の存在及び内容の証明力を強化しておくことができます。
民事保全手続を行う場合には、自社の権利の存在及び内容を速やかに、書類により明らかにする必要がありますので、例えば債務確認証明書や債務残高確認書は役立ちます。
付随的に、滞納が続いている場合、債権が消滅時効により失われることを防ぐ効果もあります。