建築瑕疵

1 はじめに
せっかく建築された建物に不具合がある場合、これが法律上の「瑕疵」にあたるのであれば、注文主としても、請負代金額をそのまま支払うという分けにはゆきません。
例えば、雨漏り、床の傾きなど目に見える瑕疵は勿論のこと、一般の方には気づきにくい構造耐力の問題(耐震性能)、防火性能、耐水性能の問題などがある場合もあります。
このような場合、注文主は請負人に対し、「瑕疵」の修補(修繕)や、瑕疵修補に代わる損害賠償金の支払請求をすることができます(民法634条)

2 「瑕疵」とは何か。
それでは「瑕疵」があるとは、どのような状態にあることをいうのでしょうか。
(1)
「瑕疵」とは、「完成された建物が契約で定められたとおりではないこと」をいいます。
そのため、まず瑕疵の有無を判断するためには、請負契約の内容を確定する必要があります。
しかし、この点、請負契約の内容が、契約書や見積書、設計図書などにより明確になっている場合は良いのですが、実際には、明確に契約内容が定められていないことも多い状況です。
契約内容が不明瞭な場合(特に合意をしていない場合を含む。)は、建築の最低基準を定めた建築基準法令や、日本建築学会の基準、住宅金融公庫の基準その他権威ある団体の標準的技術基準などから合理的な意思解釈を行って契約内容を確定します。

(2)
次に瑕疵の有無を判断するには、建物の現状を確認する必要があります。
一般的には一級建築士に依頼をし、現地調査を行っていただき、瑕疵の有無、内容、修繕が必要であれば修繕方法ないし必要費用等に関する意見書を作成していただきます。
意見書を作成するにあたり、建築士は、請負契約の内容等を建物が「本来あるべき状態」ととらえ、他方で「現状」がそれに達していないという箇所をピックアップし、これを「瑕疵」であるとします。
そして、該当箇所の写真を撮影し、図面上に示し、契約内容資料や法令、文献(JASS等)を対比して示すなどして、問題の箇所が瑕疵に該当することを論理的に明らかにしてゆきます。
この作業は、決して「雨漏りがある」という現象を捉えようとするものではなく、雨漏りの原因が、設計上ないし施工上のどの問題(例えば建築基準法令違反)に起因しているのかということを判断し、あくまでも、本来あるべき姿と現状の差異にスポットを当ててゆく作業であるといえます。

3 「瑕疵」がある場合の注文主の対処方法
上記2の経過を経て「瑕疵がある」との意見書を受領した場合、注文主から依頼を受けた弁護士は、まずは請負人との任意の交渉を行い、早期に和解により解決すること(一定の賠償金を受領して第三者に工事をしてもらう、工事代金の減額、当該請負人に修繕をしてもらうなど)を目指すのが通例です。
しかし、任意の交渉では解決しない場合には、調停ないし訴訟を提起することとなります(平成21年10月以後に引き渡された新築住宅については住宅紛争審査会による調停も利用可能です)。

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