認知症と会社の社長(代表取締役)の地位について教えてください。

Q 認知症と会社の社長(代表取締役)の地位

A

1.成年後見が開始した後の取締役の地位

現在の法律では、成年後見人が選任され、成年被後見人となった場合でも、取締役の欠格事由ではないこととされています。したがって、成年後見が始まった後も、取締役に就任することは出来ます。ただし、現在、取締役である状態(現在の地位)は、いったん「退任」により終了し、その後、成年被後見人に代わって、成年後見人が就任の承諾をすることが必要とされています(会社法331条の2)。

このような手続を経れば、成年被後見人であるけれども、取締役・代表取締役という地位に就くことは可能とされています。ただし、取締役や代表取締役というのは、会社に対して大きな責任を負うものですし、その判断を誤った場合には会社への賠償責任も生じます。そのため、成年後見が開始した後も、取締役や代表取締役であり続けることが望ましいことなのかは、慎重な判断が必要であると言えます。

なお、成年後見が開始し、成年後見人が就任した場合でも、本人に成り代わって、成年後見人が取締役・代表取締役の職務を担うということはありません。

2.成年後見が開始した後の「株式」の取り扱い

成年後見が開始した後も、株式を手放したり、失ったりすることはありません。ただし、これまで被後見人は、後見が開始するたびに株主として議決権を行使してこられたと思われますが、後見が開始したあとは、成年後見人が株主権を行使します。ただし、たとえば弁護士等の専門職が成年後見人として就任した場合、基本的には保守的・謙抑的な形での株主権の行使にならざるを得ないと思われます。たとえば、どの人材が後継者に適任か等という判断をすることがどこまで出来るのか難しい問題があるところです。

3.新しい代表者取締役の選任

こうしたことを踏まえると、本来であれば、認知症が深刻化する前に、後継者問題を決定し、新しい後継者を考えて、早期に次の代表取締役を選任しておく等が事前の対応として考えられます。