Q 親族が任意後見人になる場合があるようですが、その場合、どのような管理がなされますか。管理状況が不安です。
A お尋ねの件の場合、お母様とお姉様が公証役場に行き、「任意後見契約に関する法律」に基づき、任意後見契約が締結されているものと思われます。以下、状況ごとに説明いたします。
1.任意後見契約の効力が生じているかどうかによる区別
こうした任意後見契約は、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任された時からその効力が生じるものとされています。したがって、状況としては、①既に家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されて契約の「効力」が生じているのか、又は②効力を生じていない状況なのかを確認する必要があります。任意後見監督人が選任されていない状況だとすると、受任者(上記の例でいうと「姉」)は、契約書に記載された「委任」の内容での事務を行う権限はまだないことにないます。統計などを見ると、任意後見契約自体は「締結」されたが、結局、任意後見監督人が選任される手続に進まなかった(発効しなかった)という例が非常に多いことが明らかになっています。
2.任意後見契約の効力が生じている場合の監督
家庭裁判所によって、任意後見監督人が選任されている場合、その者が、任意後見人の職務を監督し、また、任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をするという職務を担います。
そのため、親族として、この任意後見人の職務のあり方に疑問がある場合などには任意後見監督人に連絡・報告してみることなどが考えられます。
3.任意後見人の解任
法律上、任意後見人に「不正な行為」「著しい不行跡」「その他その任務に適しない事由があるとき」が有るときには、家庭裁判所が、任意後見人を解任することができるとされています。手続としては、別の親族等が「解任申立書」を作成して、それを前提に裁判所が審判を行うというもので、一般にハードルは高いと言われています。
4.任意後見契約が締結されている場合における法定後見
任意後見契約がすでに先に締結され、効力を持っている場合であっても、裁判所が「本人のために特に必要があると認めるとき」は、別途、家庭裁判所が後見開始審判を行うことができるとされています。たとえば、任意後見人と本人との間に財産トラブルが存在し、それが未解決になっている場合などが典型例になります。また、それ以外に、任意後見契約の内容が、現在、生じている問題に対応するには機能しない(「代理権」の範囲が狭い)場合なども挙げられます。