父を施設に入所させる費用(利用料等)を,私が出金して問題ありませんか。

Q 父の認知の状態が良くありません。施設に入所させようと思うのですが,必要な費用(利用料等)を,私が父に代わって出金し支払うことに問題はありませんか。

A あなたがお父様のために善意でしたことでも,他の兄弟から色々とあらぬ疑いを持たれてしまうことは往々にしてあります。実際,将来お父様が亡くなられた場合には,相続人である他の兄弟はお父様の預貯金口座の入出金履歴を請求することができますので,履歴を見た結果,あなたのした出金についてお父様の意思に反して出金したのではないか?あなたがお父様の預貯金を我が物にしたのではないか?などと主張され,不当利得返還請求訴訟を提起されるということも珍しくありません。

また,金融機関としても,お父様の認知能力について疑義が出れば,払戻しの有効性を争われるリスクがありますので,払戻しに応じるかについてはどうしても慎重にならざるを得ません(ただし,全国銀行協会の指針では,認知能力が失われている場合で,預貯金をその施設費用等のために使用するという確認が取れれば,引き出しに応じるべきとされています)。

そのため,紛争を未然に防止する方法として,お父様の認知能力が低下した場合は,成年後見制度を利用し,その結果選任された後見人が出金を行うということが検討される必要があります。また,将来相続人となる兄弟で話し合い,どのようにお父様の費用を支払っていくか(それには,前提として,お父様を施設に入所させるのか,入所させるとしてどこに入所させるのかといった介護方針についての協議を含むでしょう),十分に話し合っておくことも必要と思われます。