Q成年後見を利用するメリットについて教えてください。
A以下のようなものが考えられます。
1 本人に必要な契約等をする
本人が重度の認知症にある場合や、病気やケガで意識を取り戻さない場合には、本人は必要な契約等を自ら行うことができません。たとえば、まとまったお金が必要になっても本人の預貯金をくずせず親族らが立替えを迫られたり、本人には無用な不動産を売却できず固定資産税の負担がかさむ、といった事態はしばしば起こります。
これに対し成年後見人は、本人の「代理人」として、その財産を管理する権限を有します(民法859条1項)。すなわち、成年後見人がいる場合、本人のために必要な契約等を行うことができますし、本人のために生じた費用は本人の財産から支出することができるため、本人にベストな財産管理を行うことが期待できます。
2 本人が間違ってした契約等の取消し
本人の判断能力が低下している場合、周りに言われるがままに、財産を贈与してしまったり、逆にいらない物を買わされるような事態がありえます。
これに対し成年後見人は、本人が自らの利益を害する行為をしてしまったとしても、これを後から取り消すことができるため(民法9条本文)、本人の利益を適切に保護することができます。
3 親族による持出しの防止、親族からの疑いの払拭
本人の判断能力が低下している場合、これに乗じて、本人と近しい親族が、自分のために本人のお金を持ち出すことがありえます。逆に、疎遠だった親族から、本人のお金を持ち出しているのではないかとあらぬ疑いをかけられることもありえます。このような親族間トラブルは、本人の死後、遺産分割をめぐって本格化することが多くあります。
このような事態を予防するため、成年後見人を選任することが考えられます。すなわち、成年後見人として、弁護士・司法書士等の第三者を選任してもらうことで、適正・中立な財産管理が実現できるため、将来の紛争を防止することが期待できます。