Q 遺留分侵害額請求をしたうえで、より多くの金銭を取得するためには、まず、「遺留分算定の基礎となる財産」の額を増やす必要があるとのことですが、被相続人が、単純な贈与や遺贈をした場合(民法が贈与契約として規定するもの)に限らず、例えば、
①親(被相続人)が子(相続人)の多額の債務を肩代わりしてあげたうえで子に対する求償
権を免除したり
②不動産を極めて安い金額で売ってあげたり、
③高額な不動産を若干の負担を負わせるのみで贈与したり
したような場合も、遺留分算定の基礎とすることはできますか。
A ①の、親(被相続人)が子の債務を肩代わりしてあげた場合というのは、民法としては「第三者弁済」という行為を行ったことなりますので、本人たちにそうした意識がなくても、親は子に対して、肩代わりした金額を返してほしいという請求権(求償権)があると考えます。そして、この求償権を親が免除したという場合は、無償の債務免除にあたりますから、遺留分算定の基礎とすることができます。
②の、不動産を極めて安い金額で売ってあげた場合は、「不相当な対価をもってした有償行為」にあたりますから、売主である被相続人と買主である相続人の双方が「遺留分権利者に損害を与えることを知ってなした」といえる場合には、対価分を控除した残額を、遺留分算定の基礎とすることができます(民法1045条2項)。
③の、高額な不動産を若干の負担を負わせるのみで贈与したりした場合は、負担付き贈与にあたりますから、贈与の目的から負担の価額を控除した残額を、遺留分算定の基礎とすることができます(民法1045条1項)。