Q.共有物を分割する方法にはどのようなものがあるのでしょうか?共有者の一人が共有物を単独で取得することもできるのでしょうか?
A.共有物分割は、一般に、①現物分割、②代償分割(賠償分割)、③換価分割の3つに分けられます。
① 現物分割
現物分割とは、共有物を物理的に分けることをいいます。たとえば、兄弟で100㎡の土地を共有しているときに、これに境界線を引いて50㎡ずつの2つの土地に分け(分筆といいます)、兄と弟で1筆ずつの土地を取得する場合がこれに当たります。
一見最も分かりやすい分割方法ですが、実際上、境界線を適切に引く作業は、土地家屋調査士への委託を要し,相応の費用がかかります。また、分筆をした結果,同一単価で土地を評価することができなくなり(接道状況のよい土地とそうでない土地ができるなど)合意形成に難航したり,全体としても価値が下落するリスクも存在します。
② 代償分割(賠償分割)
代償分割とは、ある共有者が共有物を単独取得する代わりに、代償として他の共有者に金銭を支払うことをいいます。たとえば、兄弟で共有する土地について、兄が土地の全部を取得する代わりに、弟に代償金1000万円を支払う場合がこれに当たります。
現在住んでいる自宅の土地建物を単独で所有したいときなどにこの方法が有用です。他方、共有不動産の価格評価に争いが生じやすいこと、代償金を支払えるだけの資金が必要となること等がネックとなります。
なお、共有物分割訴訟における代償分割は、これまで民法上直接の根拠がなく、判例上認められた例外的な分割方法とされてきました(最判平成8年10月31日)。しかし、令和5年4月1日施行の改正民法では、訴訟による代償分割について明文の根拠が定められることとなりました(改正民法258条2項2号、3項)。
③ 換価分割
換価分割とは、共有物を第三者に売却し、その売却代金を共有者間で分けることをいいます。たとえば、兄弟で共有する土地について、これを第三者に1000万円で売却し、500万円ずつを分け合う場合がこれに当たります。
共有物の取得を希望する共有者がいない場合、または取得を希望する共有者がいてもその支払能力が信頼できない場合などに、この方法が有用となります。
なお、共有物分割訴訟における換価分割は、現物分割・代償分割がいずれも相当でないときに限って行いうるものと解されています(最判平成8年10月31日、改正民法258条3項)。