Q.共有状態のまま不動産を放置することにどのようなデメリットがあるのでしょうか?
A.共有関係のデメリットとしては、以下の1~3などが挙げられます。
1 共有物の利用・処分が制限される
共有物は共有者全員のものですから、自分の思うように利用できるわけではありません。たとえば、判例上、共有物全体について売却したり抵当権を付ける場合、共有者全員の同意が必要とされています。
また、共有物を賃貸する場合には、原則として全共有持分の過半数に当たるだけの共有者の同意が必要となります(民法252条)。ただし、その賃貸が民法252条の「管理」といえる範囲を超えて、売却や抵当権設定のような「処分」に当たる場合には、共有者全員の同意を要すると解されています。たとえば、民法602条所定の期間を超える賃貸借や、借地借家法が適用される賃貸借については、共有者の利害に与える影響が大きいことから、共有者全員の同意を要するとした裁判例があります(東京地判昭和39年9月26日、東京地判平成14年11月25日)。
そのため、たとえば2人で共有する不動産(持分1:1)について売却するか賃貸するかで意見が対立すれば、結局どちらも実現できないことになり、せっかくの不動産を有効に利用できないという事態が起きます。
(参考知識)共有物の利用要件のまとめ
単独 | 共有物の使用 |
自己持分のみの売却や担保権設定 | |
保存行為(共有物の修繕、不法占拠者への明渡請求など。) | |
過半数持分 | 管理行為(使用方法の決定、賃貸(処分に当たるものを除く)など。) |
全員 | 処分行為(①売却、②担保権の設定、③民法602条所定の期間を超える賃貸、④借地借家法が適用される賃貸など。) |
変更行為(山林の伐採、住宅を事務所に改造する行為など)。 |
2 共有者の独占使用を許す
現行民法上、共有物をある一人の共有者が独占して使用している場合、当然にその引渡しを求めることはできません。そのため、たとえば自分が共有建物を使いたいと思っても、実際に占有使用している共有者が任意に鍵を渡してくれなければ使用できないことがありえます。
ただし、共有物を占有使用している共有者に対しては、自己の持分割合に応じた使用料を請求することができます(たとえば、兄弟それぞれ持分6:4で共有する不動産について弟が占有使用している場合、その不動産全体の適正使用料が月額10万円であれば、兄は月額6万円を弟に請求することができます。)。また、協議により、全共有持分の過半数に当たるだけの共有者の同意を得れば、別に使用者を定めることもできると解されます(民法252条)。
3 共有者変更の可能性
今のところは共有者の関係が円満でも、共有者が変わることで、共有物の利用等に関して合意が困難になるおそれがあります。第三者が共有者となる場合としては、以下のようなケースが挙げられます。
共有者は、自己の共有持分を第三者に売却することができます。他の共有者から見れば、どこの誰とも分からない第三者が共有者となる可能性が常に存在することになります。
また、たとえばある共有者が死亡し、相続人として妻・長男・二男がいるような場合、遺産分割を経ない限り、妻・長男・二男の三人ともが新たに共有者となります。そのため、時間の経過とともに共有者が増えていき、協議が困難になることがありえます。