財産分与にあたって個別の財産の評価方法を教えて下さい
①不動産
不動産の評価は、なるべく新しい評価書により算定することになります。
別居後口頭弁論終結時までに売却されていた場合には、実際に売却された代金で算定されることが多いようです。この場合、手数料を引くことがありますが、単に保有している物件については、手数料はひかないで判断する場合が多いです。
②預貯金
別居時の残高で評価をするのが原則です。
③生命保険
別居時の解約返戻金相当額で算定するのが原則です。
④ 株式その他の有価証券
原則として口頭弁論終結時の評価によります。ただし、それまでに株式等が売却されている場合には、売却時の価格(手取り)で評価されることが多いようです。
ただし、簡易に算定する方法として、口座を管理する証券会社からの月次報告書(但し別居時期に近いもの)で算定するのも合理的であるとされています。
⑤ 退職金
退職金の算定方法としては、次の3つが考えられます
ア 別居時に自己都合で退職した場合の退職金相当額を算定して財産の額とする(ただし結婚前の労働に対応する部分は控除する)
イ 定年退職時の退職金から別居後労働分と婚姻前労働分を控除し、中間利息を控除して口頭弁論終結時の現価を算出する。
ウ 定年退職時の退職金から別居後労働分と婚姻前労働分を控除する。退職金の支払い時期は退職時とする(この場合中間利息を控除する必要はなくなります。)。
一般的にはアの算定方法によることが多いようです。
定年退職がかなり先のことであったとしても、算定の対象としているようです。
退職が5年以内であれば、イを基準とすることも少なくないようです。
ウは余り採用されていません。支払いが将来となるため、支払の実現可能性に心配があるからです。
⑥ 住宅ローン
住宅ローンの支払についてローン債務者ではない配偶者の寄与がない場合は、別居時のローン残高を基準とすることが多いようです。
他方、ローン債務者でない方の当事者が代わりに弁済をしている場合などは、別居後の残高減少に対する寄与の割合を考慮する必要があります。
⑦ その他の債務
住宅ローン以外の債務であっても、夫婦の生活費のために消費者金融から借金をした場合や、子供の教育のために借金をした場合は、財産分与にあたって、当然に考慮されることになります。
これに対し、夫婦の財産取得や婚姻生活維持に無関係な夫婦の一方の債務は、財産分与において考慮されないのが原則です。
例えば、ギャンブルなど個人の趣味のために生じた借金や、身内や友人に融資するための借金などは基本的に考慮されません。
⑧未払いの婚姻費用
離婚訴訟において、附帯請求として未払婚姻費用の支払請求をすることはできませんが、未払婚姻費用の有ること及びその額を、財産分与の事情の一つとして主張することができます。
ただし、必ずしも請求可能額の100%が財産分与額に上乗せされるとは限りません。
なるべく婚姻費用については、早めに婚姻費用分担調停の申し立てをして、債務名義となるようにしておくべきであると思料いたします。