遺留分侵害額請求における火災保険等の取り扱い

Q 質問

 父は、全財産を兄に相続させる旨の遺言を作成して、死亡していました。火災保険や建物更生共済保険などの取り扱いを教えてください。

A 回答

 これらの保険については、特に相続が発生したこと(上記事例で言えば「父」が亡くなられたこと)で保険金が支給されるわけではありません。したがって、保険金を受領するという考え方がありませんので、遺言によって「契約者」の地位を承継した者が、その保険を承継すると考えることになります。

 その上で、貯蓄性(資産性)のある保険であるか否かを考えることになります。

1 満期になると満期返戻金が支払われるタイプの火災保険や、建物更生共済保険の場合

 満期になると満期返戻金が支払われるタイプの火災保険や、建物更生共済保険の場合、当該保険を承継できることになった者は、死亡日時点の解約返戻金相当額の資産を承継したのと考えるのが一般的です。そのため、遺産分割協議や、遺留分侵害額請求の際の計算にあたっては、その金額を計算に入れるのが通例です。

2 満期返戻金が支払われないタイプの火災保険である場合

 いわゆる掛け捨て型の保険の場合、基本的には、遺産分割協議や、遺留分侵害額請求の際の計算にあたって、その保険の存在を考慮することがありません。土地・建物を相続する相続人は、被相続人が契約していた保険を承継するか、新たに別の火災保険に加入するかは自由であり、前者の判断をしたからといって、特に積極的な財産を承継するものではないためです。