遺留分侵害額の計算方法

Q遺留分侵害額はどのように求めるのでしょうか?計算例も含めて教えてください。

A遺留分侵害額は、以下の計算式によって求められます。

遺留分侵害額

= ①当該相続人の遺留分の額

 -②当該相続人が遺産分割によって得るべき財産(具体的相続分)の額

 -③当該相続人が特別受益として得た財産の額

 +④当該相続人が負担する債務の額

 

 なお、上記①の「遺留分の額」とは、相続開始時のプラスの財産の額から、マイナスの財産(債務)の額を差し引き、民法1044条1項又は3項の要件を満たす贈与がある場合にはその額を加算したものに、遺留分割合を乗じた金額をいいます。

①遺留分の額

=(相続開始時におけるプラスの財産額

  -相続開始時におけるマイナスの財産(債務)額

  +民法1044条1項又は3項の要件を満たす贈与の額)

 ×遺留分割合

 

 また、遺留分割合とは、多くの場合、当該相続人の法定相続分の1/2に等しくなります。ただし、以下のような場合には、異なる数値を用いますので、留意が必要です。

・法定相続人が直系尊属のみの場合、遺留分割合は法定相続分の1/3。

・法定相続人が兄弟姉妹のみの場合、遺留分割合は0。

・法定相続人が配偶者と兄弟姉妹である場合、配偶者の遺留分割合は1/2、兄弟姉妹は0。

 

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   以上の計算式を前提に、遺留分侵害額を計算してみましょう。

【事例】遺言者の相続人としては、妻A、子B、子Cがいます。相続開始時の遺産額は1億円ある一方で、相続開始時の債務額は3000万円あります。また、遺言者は、子Cに対して、死亡の7年前に生計の資本として600万円を贈与していたほか、知人Dに対して8000万円を遺贈する旨の遺言を残していました。

 妻A、子B、子Cの遺留分侵害額はそれぞれいくらになるでしょうか?

 

 まず、妻A、子B、子Cの法定相続分はそれぞれ1/2、1/4、1/4であり、遺留分割合はそれぞれ1/4、1/8、1/8となります。さらに、子Cに対する600万円の贈与は、民法1044条1項又は3項の要件を満たすものであり、また特別受益(民法903条1項)にも当たります。これを前提に、計算を行います。

【妻Aの遺留分侵害額】

①妻Aの遺留分の額

 :(1億円-3000万円+600万円)×1/4=1900万円

②妻Aが遺産分割によって得るべき財産(具体的相続分)の額

 :(1億円+600万円-8000万円)×1/2=1300万円
  ※遺産分割の際、特別受益は遺産に持ち戻します(遺産に加算します)

③妻Aが特別受益として得た財産の額

 :0円

④妻Aが負担する相続債務の額

 :3000万円×1/2=1500万円

 

以上より、遺留分侵害額は、
①1900万円-②1300万円-③0円+④1500万円=2100万円となります。

 

【子Bの遺留分侵害額】

①子Bの遺留分の額

 :(1億円-3000万円+600万円)×1/8=950万円

②子Bが遺産分割によって得るべき財産(具体的相続分)の額

 :(1億円+600万円-8000万円)×1/4=650万円

③子Bが特別受益として得た財産の額

 :0円

④子Bが負担する相続債務の額

 :3000万円×1/4=750万円

 

以上より、遺留分侵害額は、
①950万円-②650万円-③0円+④750万円=1050万円となります。

 

【子Cの遺留分侵害額】

①子Cの遺留分の額

 :(1億円-3000万円+600万円)×1/8=950万円

②子Cが遺産分割によって得るべき財産(具体的相続分)の額

 :(1億円+600万円-8000万円)×1/4-600万円=50万円
   ※特別受益600万円を遺産に持ち戻した後、Cの取り分からこれを差し引きます。

③子Cが特別受益として得た財産の額

 :600万円

④子Cが負担する相続債務の額

 :3000万円×1/4=750万円

 

以上より、遺留分侵害額は、
①950万円-②50万円-③600万円+④750万円=1050万円となります。