せっかく真剣な交際を望まれていたのに、実はお相手が既婚者であったと分かったということ、心中お察しいたします。近年のマッチングアプリの流行により、同様のトラブルも増えています。
あなたが慰謝料の支払義務を負うには、あなたが相手男性に奥さん(配偶者)がいることを知っていたり(故意)、仮に知らなくても、通常人であれば分かったといえること(過失)が必要です。すなわち、あなたに「故意」や「過失」がなく、相手男性が独身者だと考えていたのであれば、あなたは慰謝料を支払う責任を負いません。
とはいえ、男性の奥さんから慰謝料を請求され、「故意」や「過失」があったと主張された場合、あなたの方でも、事実を主張し、それを裏付ける証拠を用意する必要があります。たとえば、男性がアプリ上で「独身者」であると明確に表示(説明)していた場合、そのような画面の写真やスクリーンショットは有効な反論材料となるでしょう。また、明示したものがない場合であっても、独身者であることを登録の条件としているアプリの場合、それに登録した者を独身者だと信じることはやむを得ず、「過失」はないということもできそうです。
とはいえ、運営側が、独身者であることの確認を厳密には行っていないような場合(単純な申告制など)であれば、独身者が登録することは困難ではないため、独身者だと信じたことが軽率(「過失」あり)と言われるリスクもあります。その場合、相手方の年齢や婚姻歴といった状況や、相手方の言動(たとえば、独身・単身と説明しているにもかかわらず、夜間は必ず予定があるとか、自宅には決して招かない等)等の様々な事情から,「独身者だと信じたことが相当か」について主張を行うことになります。
悲しいですが、気軽に登録のできるアプリを利用する場合には、身を守るため、相手方が真に独身者かについては、一定の注意を払った方がよさそうです。