1 基本的な考え方
公務災害として認められるためには,①公務遂行性と,②公務起因性の2つの要件を満たす必要があります。
公務遂行性とは,任命権者の支配管理下にある状況で災害が発生したことをいい,公務起因性とは,公務と災害との間に相当因果関係があることをいいます。
2 負傷の場合
負傷は,その発生が外面的で可視的であるため,公務との相当因果関係を求める際に,特に医学的判断が必要とされないのが通常です。
そのため,公務上か否かの認定は,原則として,被災職員が職務遂行中その任命権者の支配管理下の状態で災害を受けたか否かを判断して行われ,次のような場合には,原則(★1)として公務災害とされます(★2)。
① 自己の職務遂行中の負傷
② 職務遂行に伴う合理的行為中の負傷(職務附随行為,職務随伴行為)
例)職務待機中の行為,生理的必要行為,公務達成のための善意行為等
③ 職務遂行に必要な準備行為又は後始末行為中の負傷
④ 救助行為中の負傷,防護行為中の負傷
⑤ 出張又は赴任の期間中の負傷
出張中の職員の行為を大別すると,ⅰ出張用務そのものを遂行する行為,ⅱ旅行をする行為,ⅲ私用の行為の3つに分けられます。
ⅰの出張用務そのものを遂行する行為中の負傷については,①と同じです。
ⅱの旅行をする行為は,合理的経路上の災害であれば,特に恣意的行為に起因したものでない限り,公務上といえます。
★1 故意又は,本人の素因によるもの,天災地変(ただし天災地変による事故発生の危険が著しく高い職務に従事している場合及び天災地変による罹災地への当該罹災地以外の地域から出張した場合におけるものを除く),偶発的な事故(私怨によるものを含む)であると,明らかに認められるものは,公務災害と認められません。
★2 出勤又は退勤途上の負傷は,一般的には,公務災害ではなく,通勤災害として取り扱われます。ただし,公務運営上の必要により特定の交通機関によって出勤又は退勤することを強制されている場合の出勤又は退勤の途上など,公務災害となる場合もあります(「公務上災害の認定基準について」平成15年9月24日付け地基補第153号 基金理事長通知)
また,
⑥ 設備の不完全又は管理上の不注意による負傷
ⅰ 所属部局が専用の交通機関を職員の出勤又は退勤の用に供している場合において,当該出勤又は退勤の途上にあるとき,ⅱ 勤務のため,勤務開始前又は勤務終了後に施設構内で行動している場合,ⅲ 休息時間又は休憩時間中に勤務場所又はその付属施設を利用している場合
これらの場合に発生した負傷で,勤務場所又はその付属施設の設備の不完全又は管理上の不注意その他所属部署の責めに帰すべき事由によると認められるものは,原則として,公務災害となります(任命権者の施設管理責任に着目)。
⑦ 公務運営上の必要により入居が義務付けられている場合の宿舎の不完全又は管理上の不注意による負傷
これは,原則として公務災害となります。
⑧ 職務遂行に伴う怨恨による負傷
職務遂行に伴う怨恨により第三者から加害を受けて発生した負傷は,公務災害となります。
(対比)職務遂行中であっても,私的怨恨によって第三者から加害を受けた場合は,私的行為が直接の原因で災害が発生したものですから,公務上とはいえません。
⑨ 公務上の負傷又は疾病と相当因果関係をもって発症した負傷
公務上の負傷又は疾病と相当因果関係をもって発症した負傷は公務災害となります。
⑩ その他公務と相当因果関係をもって発症した負傷
その他公務と相当因果関係をもって発症した負傷は公務災害となります。