PFI事業をめぐる契約の締結支援

1 PFI事業契約

 事業契約(PFI法第5条第2項第5号)とは、①選定事業者が選定事業にかかる施設の設計、建設工事、維持・管理及び運営の業務並びに資金調達を行うことにより管理者等の要求する水準の公共サービスを管理者等に対し提供する義務を負い、②管理者等が選定事業者に対し提供される公共サービスの対価を支払う義務を負うことなどを規定する、管理者等と選定事業者との間で結ばれる契約をいいます。
 事業契約においては、次のような事項が取り決められます。
  ⓐ 事業全体にかかる事項(目的、事業趣旨の尊重、期間、日程、事業概要、規定の適用関
    係、選定事業者の資金調達、公有地の貸付、許認可の取得、近隣説明等)
  ⓑ 施設の設計、工事にかかる事項(設計、工事、管理者等による確認、施設の引渡し等)
  ⓒ 施設の維持管理、運営にかかる事項
  ⓓ サービス対価の支払いにかかる事項
  ⓔ 契約の終了にかかる事項(管理者等の解除権、選定事業者の解除権、不可抗力等による
    解除権、解除の効力、違約金、契約終了時の事務等)
  ⓕ その他(選定事業者の権利義務の処分、株式の譲渡、経営状況の報告、遅延損害金、履
    行保証、保険加入義務、守秘義務、疑義に関する協議、不可抗力による損害の対応等)

 

2 基本協定
 選定事業に関し、コンソーシアムが落札者として決定されたことを確認し、管理者等及び当該コンソーシアムの義務について必要な事項を定める管理者等とコンソーシアムの構成企業との間で結ばれる契約を、基本協定といいます。
 通常は、①落札者であるコンソーシアムの構成企業のSPC設立に関する事項(日程や株主構成等)、②事業契約締結に至らしめる義務に関する事項、③選定事業の準備行為に関する取扱い、④事業契約締結に至らなかった場合の費用負担に関すること等について規定されます。
 PFI法上、基本協定を締結することが必須となるわけではありませんが、
  ⓐ 落札者の決定から事業契約締結まで一定の期間があることが多いところ、その間の基本
    的な準則を定めるため、締結しておく方が望ましいことが多いと思われます。
  ⓑ また、落札者がSPCを設立する場合は、落札者とSPCの法人格が異なることから、
    その同一性を担保するため基本協定の締結が必要となります

 

3 直接協定(ダイレクトアグリーメント)

 選定事業者による選定事業の実施が困難となった場合などに、管理者等によるPFI事業契約の解除権行使を融資金融機関等が一定期間留保することを求め、資金供給している融資金融機関等による選定事業に対する一定の介入(ステップ・イン)を可能とするための必要事項を規定した管理者等と融資金融機関等との間で直接結ばれる協定です。
 要求水準の未達や期限の利益の喪失等一定の事項が生じた場合の相互の通知義務や、選定事業者の発行する株式や有する資産への担保権の設定に対する管理者等の承諾などについて規定されます。
 実際に、SPC又はそのスポンサーの経営がひっ迫するような状況に陥った場合には、プロジェクトを早期に正常な状態に回復することが重要ですが、そのためには、公共側と融資金融機関が冷静かつ慎重に、プロジェクトの引受先を選定して事業を引き継がせるなどの対応が必要となります。
 そこで、事前にそのような事態を想定した協定を締結する必要があります。

 

4 その他
 以上のほか、PFI事業においては、①事業関連契約(業務委託契約、業務請負契約など)、②融資契約、③担保関連契約、④債権者間契約、⑤出資者支援契約、⑥株主間協定などの関連契約があります。