●自治体における不動産に関する契約
自治体の不動産に関する契約としては,以下のようなものがあるかと思われます。
(自治体が用いる不動産の取得等)
・私人の不動産の買受,贈与の受入れの契約
・私人の不動産を借り上げる契約
(財産の活用,収入増加のための契約)
・自治体の不動産を有償,無償で貸し付ける契約
・自治体の不動産の売払,譲渡に関する契約
そして,これらの契約は,目的物や代金の金額が大きく,また,自治体や契約相手方に与える影響も大きいものが多く,紛争につながりやすい分野です。そのため,自治体にとって,不動産に関する契約は重要なものといえます。
●自治体の不動産に関する契約の注意事項
・行政財産に関する制限
自治体の保有する不動産については,「行政財産」と「普通財産」に区分されるところ,前者の場合,地方自治法上の例外に当てはまらない限り,原則として売却や貸し付けができません。
また,行政財産として使用する不動産を取得する際には,使用を妨げるような権利等がないことを確保する必要があることが多いと思われます。
・民法改正に伴う変化
令和2年4月施行の民法改正は,自治体の契約にも影響を与えます。
例えば,売買等に適用される,従前「瑕疵担保責任」とされていた責任は,目的物の数量等が契約の内容に適合しない責任へと整理されました。また,解除については,従前は債務不履行を理由とする場合には「帰責事由」が必要とされていたところ,これが不要となり,その他の解除についても,要件が整理されました。
これらの改正は,自治体におけるひな形等にも影響を与えると思われます。
● 当事務所の取扱業務
不動産に関する契約については,自治体において,共通のひな形によることとし,個別の業務ごとに異なる点を仕様書等で記載するという方式をとることも多いかと思います。
このような方式では,通常必要な契約条項をカバーできる,契約の管理方法を統一できると言ったメリットはありますが,個別の目的に合わせて必要となる条項が十分記載できなかったり,ひな形の条項の内ふさわしくないものが残る危険があります。
また,ひな形自体についても,法改正や自治体の事情等をふまえて定期的に見直すことが重要です。
自治体の事情や目的を踏まえた条項とする上では,一般的な民間における契約と同様のリーガルチェックが有効です。